実験(U) ライン生産

 

担当

 

 

1.ライン生産とは

 

実験(T)で学んだ生産負荷計画の結果を受けて、各品種を図1のような、順序良く並んでいる工程の集まりからなる生産システムで生産することを考えよう。ここで、各品種は工程の順序に沿って一定方向に流れ、それぞれの工程で必要な加工、組立オペレーションを受ける。このようなシステムでは、一定水準の生産性を確保するため、通常、各被加工組立品を一定の間隔で流し、一方、各工程は一定の時間以内に必要な作業を終えるよう努力する。このような特徴を持つ生産の方法をライン生産という。

ライン生産には、品種構成とその流し方によって、以下の分類がなされている。

1)単一品種ライン生産

2)複数品種ライン生産

21)混合品種ライン生産

22)品種切替ライン生産

 

ここでは、混合品種ライン生産(以下、混合ライン生産と略す。)に焦点を絞って論じる。詳細に入る前に、実際の混合ライン生産工程の例をビデオで紹介する(20分間)。これらは、自動車の最終組立、ボイラーの加工組立工程である。

 

 

2.ライン生産システムの設計方法(混合ライン生産の場合)

 

21.全体の手順

混合ライン生産は、一つの生産ラインに複数の品種を混合して流す方法である。このようなシステムの設計手順は図1のようである。

 

 

 

1.混合ライン生産システムの一般的な設計手順

 

なお、4ライン編成について、その問題のイメージを示すと図2のようになる。

 

 

 

2.ライン編成問題のイメージ(混合ライン生産)

 

以下に、各手順の内容を述べる。

 

1)サイクル・タイムの決定

サイクル・タイムは、単位期間中の生産負荷計画量が過不足なく生産できるように決定される。具体的には、以下の式によって求められる。

 

     (1)

 

ただし、

 サイクル・タイム

 当期の稼動予定時間

 当該計画期間における品種の生産負荷計画量

 品種数

 

2)統合先行順位図の作成

混合ライン生産では、各品種が一つの生産ラインの中を流れるため、加工組立手順の類似している品種が同一の生産ラインに割り当てられる。したがって、各品種の生産に必要な要素作業の間の先行順位関係が似通っていると同時に、異なる品種であるため、それらに若干の相違が見られる。
そこで、問題を簡略化するため、通常、各品種の要素作業に関する先行順位関係をネットワーク図の形式に表現し(これは、先行順位図と呼ばれている。)、これらを重ねあわせることによって、統合先行順位図を作成する。そして、この先行順位図を有する仮想的な品目を考え、以下、単一品種のライン生産システム設計の問題に帰着させる。

3に、 2つの品種の先行順位図から統合先行順位図を作成した例を示す。

 

3)最小必要工程数の算定と編成工程数の設定

1 計画期間中に種類の品種を1つのラインで生産する混合ラインにおいて、その総作業時間は、(2)式で表される。

 

         (2

 

ただし、

 品種の当期の生産負荷計画量

 品種を完成するために要する総作業時間

 

さて、ここで、 (2)式で表された総作業時間を当期の稼動予定時間で消化するためには、最低限、(3)式で表される作業工程が必要となる。

 

         (3)

 

ただし、

 最小必要工程数

 : 以上の最小整数値をあらわす記号

 

ここで、 (1)式より、当期の稼動予定時間は、(4) により表されるので、(3)式は(5)式のように書き替えることができる。

 

      (4)

 

       (5)

 

そこで、 (3)式ないし(5)式によって最小必要工程数を求め、この数値に若干の余裕工程数を加えて実際の編成工程数の案を確定する。

 

 

4)ライン編成

統合先行順位図における各要素作業時間(6),(7)式により変換すると、混合ラインにおいても、単一ラインの作業編成で用いたのと同じライン・バランシング手法によって要素作業の割付けができる。

すなわち、統合先行順位図における任意の要素作業の作業時間を とし、を要素作業が品種の加工組立作業に必要な場合には1,不要の場合には0と定義されたクロネッカー・デルタとすると、品種の計画期間中の生産計画量を用いれば、要素作業の計画期間中の総作業時間(6)式のようになる。

 

        (6)

 

また、要素作業の計画期間中の製品 1個当りの平均作業時間 は、(7)式のようになる。

 

          (7)

 

これからわかるように、 は統合先行順位図における要素作業時間を各品種の生産負荷計画量の比率で重みづけた値となる。

以上の準備により、混合ライン生産においても、単一ライン生産におけるライン編成手順を援用することができる。すなわち、単一ライン生産での要素作業時間のかわりに (7)式で定義される を用いることにより、の工程ごとの和が、サイクル・タイムを超えないように要素作業を各工程に割り付ければよい。例えば、上述した図3の統合先行順位図において、品種1と品種2の生産負荷計画量をそれぞれ100単位としたとき、(7)式に従ってを求めると、表1のようになる。

 

1. 生産負荷計画量で重みづけられた要素作業時間 100, 100

要素作業

要素作業時間

平均要素作業時間

@

6

1

1

600

600

1200

6

A

2

1

0

200

0

200

1

B

5

0

1

0

500

500

2.5

C

7

0

1

0

700

700

3.5

D

1

0

1

0

100

100

0.5

E

2

1

0

200

0

200

1

F

6

1

0

600

0

600

3

G

3

0

1

0

300

300

1.5

H

5

1

0

500

0

500

2.5

I

5

0

1

0

500

500

2.5

J

4

1

1

400

400

800

4

 

なお、各要素作業の、工程への割り付けに際しては、次の条件を満たさなければならない。

 

              (8)

 

        (9)

 

ただし、

 ライン編成のための工程数で、前項「(3)最小必要工程数の算定と編成工程数の設定」で決定した数値である。

 品種の生産負荷計画量

工程に割り付けられた、品種の作業時間

ここで、 (9)式は、その両辺にを乗ずることにより、各工程における当該計画期間中の総作業時間が稼動予定時間を超えてはならない条件式であると解釈される。

(9) 式からわかるように、混合ライン生産システムの設計においては、各品種の作業時間値をその品種の生産負荷計画量で加重平均した時間値がサイクル・タイムを超えなければよいとされ、したがって品種によっては、ある作業工程でサイクル・タイム以上の作業時間になることも許している。この場合、工程間に干渉を起こすことなく生産が円滑に行われるために如何なる工夫を凝らすかが現場の力量となる。一般的には、工程の間に少数の緩衝在庫(バッファ)を置くことにより対処している。

ライン編成結果の良し悪しを評価する尺度として用いられる編成効率および平準度は、それぞれ次式で表される。

 

        (10)

 

         (11)

 

 

22.ヒューリスティックなライン編成法

ここでは、ヒューリスティックなライン編成法の一例として、「 HelgesonBirnieの位置的重みづけ法」について述べる。

この方法は、各要素作業について、作業時間値とそれに後続するすべての要素作業の作業時間値から、当該要素作業の割り付け優先度を表す重み数値を求め、その値の大きさによって、優先的に工程に割り付けていくというものである。ここで求められる重みは、先行順位図における各要素作業の位置を表す性質をもっているため、位置的重みと呼ばれている。以下、例題により説明しよう。

 

≪例題≫

4、表2のような統合先行順位図および要素作業時間値において考えよう。

 

 

4.例題の統合先行順位図

 

 

2.要素作業と要素作業時間

要素作業番号

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

11

作業時間値

6

1

2.5

3.5

0.5

1

3

1.5

2.5

2.5

4

 

ただし、サイクル・タイムは10単位時間とする

 

 

この方法は、以下に示すように 4つの手順から成っている。

1]先行順位行列の作成:つぎの要領で各要素作業の先行順位行列を作成する。

·         要素作業 i が要素作業 j に先行する場合には、先行順位行列の該当する要素の値を+1とする。

·         要素作業 i j の間に先行関係がない場合、および i j の要素については0とする。

·         要素作業 i が要素作業 j に後続する場合には、先行順位行列の該当する要素の値を−1とする。

 

3に本例題での先行順位行列の作成結果を示す。

 

3.先行順位行列

 

@

A

B

C

D

E

F

G

H

I

J

@

 

+1

+1

+1

+1

+1

+1

+1

+1

+1

+1

A

-1

 

 

 

 

+1

+1

 

+1

 

+1

B

-1

 

 

 

 

 

 

+1

 

+1

+1

C

-1

 

 

 

 

 

 

+1

 

+1

+1

D

-1

 

 

 

 

 

 

+1

 

+1

+1

E

-1

-1

 

 

 

 

 

 

+1

 

+1

F

-1

-1

 

 

 

 

 

 

+1

 

+1

G

-1

 

-1

-1

-1

 

 

 

 

+1

+1

H

-1

-1

 

 

 

-1

-1

 

 

 

+1

I

-1

 

-1

-1

-1

 

 

-1

 

 

+1

J

-1

-1

-1

-1

-1

-1

-1

-1

-1

-1

 

(注)上の表においては、繁雑さを避けるため 0はブランクにしている。

 

 

2]位置的重みの計算

(12)式に従って、各要素作業の位置的重み Wi を求める。

        (12)

ただし、

 要素作業 i の位置的重み

 要素作業iの作業時間

 先行順位行列における i j 列の要素

 

本例題において、要素作業@の位置的重み Wi を求めると、

6+1+2.5+3.5+0.5+1+3+1.5+2.5+2.5+4=28

 

となり、以下、同様にして求めるとつぎのようになる。

   W2=1+1+3+2.5+4=11.5     W3=2.5+1.5+2.5+4=10.5

    W4=3.5+1.5+2.5+4=11.5,    W5=0.5+1.5+2.5+4=8.5

    W6=1+2.5+4=7.5,           W7=3+2.5+4=9.5

    W8=1.5+2.5+4=8,         W9=2.5+4=6.5

    W10=2.5+4=6.5,          W11=4

 

[3] 位置的重み順要素作業リストの作成

 [2]で求めた各要素作業の位置的重みの大きさの順に要素作業を並べた、表4のようなリストを作成する。これにより、各要素作業を割り付ける際に先行関係が守られているか否かをチェックできる。本例題の場合は、表4のような結果になる。

 

4.位置的重み順要素作業リスト

要素作業

位置的重み

直前先行要素作業

@

28

A

11.5

@

C

11.5

@

B

10.5

@

F

9.5

A

D

8.5

@

G

8

B,C,D

E

7.5

A

H

6.5

E,F

I

6.5

G

J

4

H,I

 

4]要素作業の割り付け

次の要領で、各要素作業を作業工程に割り付けていく。

5に本例題での割り付け結果を示す。この方法は必ずしも最適解が得られるというものではないが、アルゴリズムが単純で比較的プログラミングが容易であり、問題の規模が大きくなってもそれほど急激に計算時間が増加しないという利点がある。

 

5.位置的重みづけ法によるバランシング結果

要素作業

位置的重み

要素作業時間

累積時間

作業工程

@

A

B

28

11.5

10.5

6

1

2.5

6

7

9.5

 

1

 

C

F

D

G

E

11.5

9.5

8.5

8

7.5

3.5

3

0.5

1.5

1

3.5

6.5

7.0

8.5

9.5

 

2

H

I

J

6.5

6.5

4

2.5

2.5

4

2.5

5.0

9.0

 

3

 

23.実験課題3

1)ライン編成の体験

ここでは、冒頭にビデオで紹介した自動車組立工程を例に取り、実際のデータを用いてライン編成を体験学習してみよう。なお、この課題は、図5のフローチャートに従って取り組むこと。

注:別紙で説明

5.ライン編成の手順(混合ライン生産)



すなわち、次の3つの課題に答えよ。

 

3A)ライン編成データシート(2)を完成させ、提出せよ。

3B)<編成プログラム1>を起動して、アルゴリズムを用いたライン編成により各工程への要素作業の割当てを決定し、ライン編成結果(3)を完成させ、提出せよ。

※ヒューリスティックなライン編成法として「 HelgesonBirnieの位置的重みづけ法」(村松 林太郎著 「新版 生産管理の基礎」参照)を用いる。<編成プログラム1>は、「 HelgesonBirnieの位置的重みづけ法」をC++言語で書いたものである。各自、問題文の指示の通りに必要データを計算し、入力すると、編成結果が出力される。

3C)課題3B)のアルゴリズムによる編成結果を参考にして各自、<編成プログラム2>を起動して、各工程への要素作業の割当を決定し、ライン編成結果(4)を完成させ、提出せよ。(ただし、3Bとは異なる編成を考えること。)そして、3B)の結果と比較し、考察をせよ。

※このプログラムは、各自がコンピュータ上でライン編成を体験できるようにしたものである。各自、総工程数を決定して入力した後に、各工程に要素作業を割り当てて行く。割当ての途中で各工程のサイクル・タイムを超えたり、要素作業間の先行後続関係に違反した場合は、その旨のメッセージが出て、やり直しとなる。

※ライン編成において留意すべき点は、投資効率を上げるため、編成効率をできるだけ1に近づけること、および各工程の作業量を均等化するため、工程間の負荷平準度をできるだけ0に近づけることである。

(成功例)

<画面出力>

 

<ファイル出力>

サイクルタイムは100です

1工程に入る要素作業は 1 2 3 4 5 6 7 時間値は97.013

2工程に入る要素作業は 8 9 10 11 12 15 時間値は91.465

3工程に入る要素作業は 13 14 16 17 18 19 時間値は90.507

4工程に入る要素作業は 20 21 22 24 25 時間値は95.866

5工程に入る要素作業は 23 26 27 28 30 35 36 38 時間値は99.039

6工程に入る要素作業は 29 31 32 33 34 37 39 40 時間値は91.547

7工程に入る要素作業は 41 42時間値は90.107

8工程に入る要素作業は 43 44 45 時間値は 99.92

9工程に入る要素作業は 46 47 48 49 時間値は98.826

この組み合わせは時間値、先行関係を満たしています

編成効率は94.9211% です

負荷平準度は0.103381 です

 

<画面出力>

 

(失敗例:先行関係の制約に違反した場合)

<画面出力>

 

 

 

【パソコンによる処理手順】

 

以下の手順に従って本日の課題に取り組むこと。

 

1)サーバーから課題ファイルあるいはプログラムファイルを持ってくる。

各自、サーバー上の\\labfsrv01\common\\生産システム工学実験\生産管理実験第2回(ライン編成)\実験課題3A3Cから該当する課題ファイルとプログラムファイルを各自のコンピュータ上にコピーする。

 

2)各自のコンピュータ上で、課題を処理する。

課題とプログラムは、それぞれMSWORDExcelあるいはC++言語で記述されている。プログラムの出力結果は画面とファイルに出力されるので、出力ファイルを各自のワードファイルに保存することによって再利用することができる。プログラムと出力ファイル名の対応を以下の表に示す。

 

6.各プログラムの出力ファイル名

プログラム名

出力ファイル名

編成プログラム1

編成出力ファイル1

編成プログラム2

編成出力ファイル2

 

 

3)結果を表やグラフにし、検討考察する。

エクセルを用いてグラフ化を試みる。また必要があれば23の手順を繰り返す。

 

出力ファイルをエクセルに取り込む方法:

1. エクセルを起動する

2. 「ファイルを開く」にして検索先はプログラムファイルを保存した位置を指定する

3. 「ファイルの種類」を選び「すべてのファイル」に指定する

4. 「編成出力ファイル1 あるいは 2」を選びファイルを開く

 

 

5. テキストファイルウィザードが起動し、下の画面で「次へ」をクリックする

 

 

6. 下の画面で区切りたい位置をクリックして線を入れて「完了」をクリックする

 

 

 

 

 

4)レポートをワードファイルに作成し、提出する。

 

提出方法は、サーバー上の \\labfsrv01\common\\生産システム工学実験\生産管理実験第2回(ライン編成)\課題提出3A)〜 \\labfsrv01\common\\生産システム工学実験\生産管理実験第2回(ライン編成)\課題提出3C)にコピーすること。

報告内容は以下の項目とする。

 

3A)について

・ライン編成データシート(2

 

3B)について

・ライン編成結果表(3
・ピッチダイアグラム
・評価尺度値

 

3C)について

・ライン編成結果表(4
・ピッチダイアグラム
・評価尺度値
・考察

  

4.宿題

上記の3つの課題の内、3C)<編成プログラム2>に関する課題について、時間内に終わらない者は宿題とし、次週の同実験開始までに提出完了しておくこと。ただし、宿題提出となった者は減点とする。

提出方法は、サーバー上の\\labfsrv01\common\\生産システム工学実験\生産管理実験第2回(ライン編成)\宿題提出フォルダにコピーすること。