生産システム工学実験

工程解析(品質管理)

担当教員:棟近雅彦

 

実験の目的

 この実験項目では,「品質管理」の講義で学習した工程解析について,実際の物作りを体験しながら修得することを目的としています.

 工程解析とは,工程から製品をサンプリングし,品質特性値と工程の条件との関係を把握することです.工程解析を通じて製品の品質特性値にばらつきを生じさせている原因を追究し,品質ばらつきの小さい工程の条件を適切に定めることがみなさんへの課題です.

 この実験で取り扱う製品はプラスチック板(以下,プラ板と略す)です.原材料を熱処理し,規定の寸法の最終製品に仕上げることが要求されています.以下に,製品の生産方法を説明します.

 なお,この実験ではオーブントースターを利用して熱処理を行いますので

やけどをしないように十分注意してください.

 また,電力容量に制限がありますので,オーブントースターを使用しているときは,

パソコンは班で1台だけにしてください.

 

製品と工程の説明

 みなさんが生産するのは熱処理したプラ板です.形状は正方形で,縦,横ともに

規格値は,21.5mm〜23.5mm

です.21.5mm,23.5mmは良品です.品種は,厚みが0.21,0.35,0.50mmの3種類あります.3品種,すべての良品が必要です.

 現在は,工程設計がほぼ完成に近い状態で,以下のような仮の作業標準が定められています.(なお,作業標準はWordファイルでも用意されていますので適宜活用してください.)

 

 

作業標準

(1)B4のプラ板(原材料)に定規と細めの黒色ボールペンで,50mm×50mmの正方形を5×7個描く(図1,2参照).それを各品種2枚作成する.

(2)寸法の測定位置を決めるために,油性のペンで正方形の真ん中に線を描く.

(3)品種等を識別できるように,厚み,通し番号,原材料の寸法(50×50のように)を油性のペンで書き込む.(図3,4参照)

    

   図1 線引き作業                   図2 プラ板

     

  図3 識別情報の記入                  図4 識別情報

(4)はさみでなるべく正確に正方形を切り離す.ただし,B4のプラ板1枚から20枚を切り離し,残りはとっておく.(図5)

  

図5 切り離し作業

(5)オーブントースターの受け皿に(4)で作成した正方形のプラ板を0.21,0.35,0.50の各品種を1枚ずつ乗せる.もう一枚の受け皿にも同様に3品種を乗せる.(熱処理する位置によって出来映えが異なるかもしれないので,場所の記録を残しておくと良い.)(図6参照)

        図6 プラ板を受け皿に乗せたところ

 

(6)熱処理係は軍手をはめ,受け皿をオーブントースターの上段と下段に入れる.(図7)

(7)カバーを閉めたらタイマーを4つ目の目盛りに合わせ,熱処理を開始する.(図8)

      

  図7 受け皿の投入                  図8 熱処理

 

(8)熱処理が終了したら,受け皿を素早く取り出しうちわであおいで冷やす.この間,カバーをあけておきオーブントースターを冷却する.(オーブントースターを連続稼働し,内部温度が高くなると過加熱になり製品がどろどろに溶けてしまう.)(図9,10)

(9)製品を受け皿から取り出す.

    

  図9 冷却                    図10 冷却

 

 すべての製品の熱処理が終了するまで,(5)〜(9)を繰り返してください.製品は20×3品種×2で120個できます.原材料による違いがあるかもしれないので,どのプラ板から切り離したものか識別できるようにしてください.また,残りの原材料は後の確認実験で使いますので捨てないでください.

 

製品の計測とデータ解析

 次に,取り出した製品の寸法を計測します.計測装置はデジタルノギスです.寸法の測定値は,作業標準の(2)で描いた正方形の中央部分(縦と横の2カ所)です.計測誤差が大きくならないように,正しく測定してください.(図11,12)

 データを測定したら,解析ができるようにStatWorksに入力してください.

    

図11 寸法測定                 図12 寸法測定

 

実験の進め方

 すべての製品を生産し終わるまでにかなりの時間がかかりますので,手分けをして要領よく生産してください.以下のように進めると良いでしょう.

実験の進め方

  1. 班員のうち3人は,作業標準の(1)〜(3)(プラ板の線引き)に取りかかる.人による違いが発生するかもしれないので,どの品種を誰が担当したかを記録しておく.
  2. 熱処理係を1人決め,サンプルを支給するので作業標準の(5)〜(9)で試作してみる.
  3. データ記録係を1人決め,StatWorksを立ち上げて変数名等を入力し,入力の準備をする.
  4. 残りの人は,完成品のサンプルを支給するので繰り返し測定を行い,測定誤差を把握する.繰返し測定とは,一度測定したらノギスの電源を切り,再度電源を入れ直してから再度計ることをいう.これを縦,横それぞれ10回繰返し,その分散を求める.
  5. 1.の線引きが終了したら,はさみで切り離す.切り離したものから,順次熱処理を行う.(すべてが切り離されるのを待っていたのでは間に合わない.切り離したものから次々に熱処理すること.)
  6. できた製品を順次計測し,記録係はパソコンに入力する.

 

 後の解析に必要になりますので,製作係,計測係,熱処理係,記録係が誰であったか記録しておいてください.途中で役割が変わった場合も記録に残してください.

 

工程解析

 生産が終了したらデータ解析を行います.記録係のパソコンから全員のパソコンへデータをコピーしてください.後は「品質管理」の講義で学習した工程解析の手順を進めていきます.QCストーリーも参考にしてください.

 

工程解析

  1. どのような不良の出方をしているかを把握する.
  2. 1)全体および様々な層別によりヒストグラムを描き,データの分布状況を把握する.ヒストグラムでは,形,中心の位置,ばらつき,規格外の状況を見る.

    2)全体および様々な層別により管理図を描き,時系列での変動状況,工程の安定状態を把握する.群分けもいろいろな場合を試す.

  3. 考えられる要因を挙げ,特性要因図,連関図等にまとめる.

 班でなぜ不良品が出るかについて意見を出し合い,特性要因図,連関図等にまとめる.この際,特性要因図の頭は,1.の現状把握で得られた特徴にする.(例えば,○○品種で不良が多い,オーブントースターの上段と下段で違いがある,など)

 3.2.で挙げられた要因と寸法の関係を解析する.

 ある要因xを横軸に,寸法yを縦軸に散布図を描く.要因が質的(層別要因)変数の場合は,ヒストグラムで層の違いを調べる.

 散布図で,縦と横の寸法の関係を調べることも何らかの情報が得られるかもしれない.

 4.1.〜3.の結果をもとに不良品が出ない対策を考える.

 先の作業標準は仮のものであるので,不良品が出ないような作業標準を改訂する.その方法で実際に10枚程度生産し,効果を確認する.もし,不良品が出る場合は対策を考え直す.ここでの対策は,1.〜3.の解析に基づいたものでなければならない.

 

 みなさんが最終的にレポートとしてまとめるのは,一連の工程解析の内容と改訂された作業標準です.

 

 この実験は,3回で行います.下記のスケジュールを目安に実験を進めてください.

実験スケジュールの目安

第1日目:すべての生産を完了し,ヒストグラムを描く.

第2日目:管理図での解析を行い,ヒストグラムの解析結果と合わせて要因を特性要因図にまとめる.散布図による解析を行う.

第3日目:対策案を実施し,効果の確認を行う.効果が確認されたら,作業標準を改訂する.