実験内容(3)

1.概要:

第2回までの実験において,与えられた需要量に従い,私たちは経営戦略に基づいて,料理内容・価格,規模,立地,店舗レイアウト等について設定し,その結果として開業までに必要な経営資源はどういったものがどれくらい必要でありその資金源として考えるのはどういったものであり,また開業1ヶ月後の経営状態(1ヶ月の成績,1ヶ月後の経営資源)がどのようになってしまうかを推定計算しました.その結果は各班グループでまちまちではありますが,おそらくなかなか利益が思うように確保できない結果になっていることでしょう.簡単な思いつきで起業すると,企業経営というのはいろいろな要因の複雑な関係によって成り立っているので,そう容易にはよい結果を得ることができないのです.万一うまく利益が得られたとしても,それは正にビギナーズラックというもので,いずれ大きな失敗をしてしまいます.

そこで,起業あるいは継続的な企業経営においては,様々な経営要因を同時に考慮して適切な意思決定を行なわなければならないことになります.ところが,すでにこの実験を体験した中で実感していることだと思いますが,企業経営を行なうには,様々な経営に関する項目の内容や数値が相互に複雑に関連しているので,1つの意思決定が様々に波及効果を及ぼし,最終的には当初の意思決定にまで道筋がループして戻ってきてしまう状況もあるのです.例えば,ある客数を見込んでそれなりの規模の店作りを考えるとします.ところがその規模の店では資金がかかりすぎて赤字になってしまうので,規模を縮小すると当初見込んだ客数が大幅に減少して,これまた赤字となってしまう…といったジレンマが生じてしまいます.

規模が小さすぎても,大きすぎても赤字となってしまうということであれば,その間のどこかに最適な規模というものが存在すると考えられます.その最適な規模を求めるには,試行錯誤的に数値を動かしてみることが考えられますが,私たちの経営システム工学の分野では「オペレーションズリサーチ」(2,3年で学びます)の技法によって,最適な規模をある方程式で記述するモデルを作成することで,最適解を導き出すことができます.

さて,今回(第3回)の実験では,私たちがこれまでに設定した起業のための様々な経営要因の内容を見直し,より多くの利益が獲得できる経営内容に変更することにします.それは,料理の種別を除き,経営戦略,価格設定,店舗規模,立地等について,班グループの話し合いによって,より利益が高められるように,起業の内容を変更して下さい.

とは言うものの,1年生の現段階では,前述したオペレーションズリサーチの方法を用いる知識的な準備ができていないので,試行錯誤的に経営要因の数値を変更していかざるを得ません.従って,最適解を得られる保証はありませんが,なるべく良い起業状態を発見するという立場で実験を進めて下さい.

 

2.手順

2.1.損益分岐点分析による現状の分析

まずこれまでの設定がどのような経営状態を生み出したのかを明らかにするために,「損益分岐点分析」をおこなう.これは売上高と費用の関係について,販売量を変化させて検討するものである.そのため費用を販売量の変化に伴って増減する変動費と固定費に分解する.今回のケースでは変動費は食材等費と水道等費がこれに当たり,それ以外は固定費に分類される.この分析を用いると,どれくらいの販売量があれば利益を確保することができるのかという,規模と費用と利益の関係が把握できる.「起業計画第3回ワークシート1」にたこ焼き屋の例が示されている.「計算資料」に販売量ごとの売上高や総費用を記入すると,自動的に「図表」が描かれるようになっている.ここで,単位限界利益とは販売価格から単位変動費を引いたもので,固定費をまかなう役割と,固定費を回収した後利益を生み出す役割を持っている.これが大きいほど,少ない販売量で大きな利益を獲得することができる.

自社がどれだけの販売量を確保すれば利益を確保できるか,また現在の販売量は赤字転落からどれくらい離れているかを確認しなさい.

 

2.2.経営計画のマイナーチェンジ

経営戦略はそのまま(コンセプト,事業戦略,オペレーション戦略および料理)は変えないで経営改善を行ってみる.したがって,ここでは販売価格は変えず,立地は別の候補地を選択し,供給(生産・販売)能力を変えてみることにする.改善の目標値は利益20%増加とし,何とかこの目標値に近づくよう,工夫してみなさい.なお,現在が赤字の場合は黒字になることを目標とする.

 ここでは,起業計画第3回ワークシート2を用い,これを変更する.ただし,現状を示すシートには上書きせず残しておくこと.また,改善点は何かを箇条書きでシートの最初に示しなさい.

 

 

2.3.提出するワークシート(グループ)

2.2で作成したワークシート1およびワークシート2をグループごとに翌週月曜日の正午までにlabfsrv01の指定フォルダへ提出しなさい。

 

2.4.最終レポートの作成(個人)

これまで起業計画を立ててきたが,この実験で確認した各自が起業において考慮すべきだと思うポイントを,5つ以上(多い分には構わない)箇条書きとして指摘し,それぞれの説明を5,6行程度にまとめなさい.提出期限は11月21日(月)の正午までとし,labfsrv01の指定フォルダ(最終レポート)に提出しなさい.

例)()新鮮な材料の確保と安価な仕入体制の構築

料理にとって材料は基本をなすものであり,これなくして,お客を確保することは困難である.材料さえよければ,多少コックや板前の腕が悪くてもカバーすることができ,人件費を引き下げることもできる.材料費の割合は価格の約3分の1が一般的であるから,この範囲に収まるように材料の仕入を行なうよう努力する必要があり,まとめて一括購入するなどの仕入の工夫が求められる.

 

  また,この「起業計画」実験についての感想や要望を最後に記述しなさい.(どのように批判的な内容であっても,成績に影響することはない.次年度の実験を改善するのに参考とするので,率直に述べて欲しい)