経営システム工学入門実験B「起業計画」実験内容(第2回)

1. 概要:

 第1回の実験において、決定した料理内容、規模、立地、店舗レイアウト等に基づいて、今回の実験では開業までに必要な経営資源、および開業1ヶ月後の経営状態を算定し、私たちが考えた事業計画がいったいどのような結果を金額的にもたらすのかを検討します。

 開業時の経営資源の状態を示す書類を「開業時貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)」といいますが、この実験では「開業時の必要経営資源」と「開業時の利用資金源」という言い方をしていきます。ここで考慮すべき物的資源の内容としては、設備や備品などを金額評価したもの、つまりそれらに対する出費の状況および、当面、材料購入や人件費支払いなどのために用意すべき現金額の設定が挙げられます。これらを会計的には「資産」といいます。一方、そうした資産(経営資源)を賄うのに用いた資金源として、自己資金か借金かなどということを考慮することが必要であり、その内容・金額を「負債・資本」といいます。つまり開業時貸借対照表では、どれだけの物的経営資源をどのような資金源で用意したのかということを明らかにしています。(詳しくは3年前期「経営計画」の授業で扱います)

開業1ヶ月後の経営状態というのは、1ヶ月間にどれだけ販売できて、そのためにどれだけの費用がかかり、結果として利益をどのくらい確保できたのかという経営成績を示す「損益計算書(そんえきけいさんしょ)」に関わる部分と、その経営成績の結果として、開業1ヶ月後の時点でどのような経営資源を保有しているかを示す「貸借対照表」にまとめられます。これらを「決算書」といい、経営者が経営判断を行なう上で、重要な役割を果たしています。ここで、1ヶ月間にどのようなことが行われたかを確認するために、現金収支(キャッシュフロー)を把握してみます。これはどのような収入があり、また支出があったかが、1ヶ月間の利益獲得高や1ヶ月後に保有する経営資源の状態になっているかの橋渡しとなります。

 損益計算書を作るために、どれだけ販売できたか(売上高)を知るには、売価(販売単価)と販売数量を把握することが必要です。売価は第1回実験ですでに設定してありますが、販売数量は需要量と販売能力(販売可能数量)との関係から決定されるので、その検討が行なわれます。費用には材料費や光熱費などの販売数量の多寡に応じて変化する変動費と、月給や設備関係の費用のように、月額で固定されている固定費があります。変動費は販売単位当りの費用を算定し、これに販売数量を掛け合わせて求めます。一方、固定費では、設備や人件費について実際に発生した支出を合計して求めるなどの方法を採ります。こうして売上高と総費用とが出揃ったところで利益を求めます。

開業1ヶ月後の貸借対照表を作成するにあたっては、開業時の貸借対照表がベースとなり、これが1ヶ月間の経営活動の結果によって変化します。つまり利益が生じればその分現金が入ってくるので、経営資源としての「資産」が増え、また利益は返済の必要のない資金源との「資本」して同額増えることになります。

 ここまでの段階で、取り敢えず私たちが作り上げた事業計画が、いったいどのような経営結果を引き起こすのかを算定することができたことになります。第3回実験では今回の知識を基にして、経営環境が当初の目論見と違っていた場合や、ある変動範囲を設定したときの経営状態の分析、また経営政策を変化させたときの影響の分析を行ないます。

2. 手順

2.1. 実際客数の設定

実際に売上につながる客数を算定するには、需要量と販売可能数量を左右する生産能力、収容能力を検討し、そのミニマムを取らなければならない。需要量は標準の時間帯別需要に対して、価格指数、坪単価指数および魅力度指数を加味して求めることは第1回において説明したとおりである。

次に客の滞留時間と客席数によって規定される収容能力も第1回において示したとおりである。一方、「調理時間」と1回当たりの生産量によって規定されるこの店舗の1時間当りの生産能力は次の手順で求められる。すなわち、 

1時間当り生産回数= 1時間 / 1回当り調理時間
             (6回)     (60分)    (10分)

 であるから、1時間に生産できる料理の数量は、

1時間当り生産能力= 1回当り生産量 × 1時間当り生産回数
                  (72食)      (12食)       (6回)

となる。

 店舗の1時間当りの販売可能数量は、調理時間等に基づく生産能力と食事時間等に基づく収容能力の大小関係によって決まる。つまり、

1時間あたり販売可能数量= Min{ 生産能力,収容能力}
                       (72人)        (72人)  (200人)

となる。

 次に、需要量と供給能力の大小関係から実際客数を求めるが、それは

実際客数= Min{ 自社需要,販売可能数量}
       (28人)     (28人)   (72人) (←11時台)

であるから、これをすべての時間帯について合計すれば1日の実際客数が求められる。この実際客数に営業日数および販売価格を掛け合わせれば1ヶ月の売上高(金額)が得られることとなる。

2.2.支出関係の計算

製品1単位を作るのに必要な材料消費量や作業時間など、投入される経営資源の量を物理的単位で示したものを「原単位」というが、これは材料消費量や設備、従業員への負荷の大きさを把握するための重要な基礎となるものである。この「起業計画」実験では料理1食当りを調理するのに必要な各種「材料」を推測し算定する。「材料」の原単位は材料費の価格を算定するために利用される。すなわち、1食当りの材料消費量に各材料単価を掛け合わせれば、各材料の1食当り材料費が算出され、すべての材料を合計すれば材料費全体が算定できる。

材料費は作って売れば売れる(作れば作る)ほど発生するので、売上高の変動によって左右される「変動費」と呼ばれる。材料費以外の変動費として、ここでは水道光熱費を取り上げよう。水道光熱費Sについては、料理価格xの関数として与えられるものとする。
           
x


一方、売上高が増加しても減少しても金額が変わらない費用を「固定費」という。たとえば、人件費や家賃はお客さんが店に入ろうが入るまいが発生してしまうので、その代表といえる。 

人件費については月給か時給か、その性質によって月額を計算すればよい。備品については購入した物品がずっと使えるわけではない。そこで1年間ですべて入れ替えるものとして、月額では全体の1/12を補充するものとして考えてみよう。

2.3.設備について

(1)外装看板工事費は,間口の幅に比例する
   ・基準外装看板工事費70万円/m×間口の幅(m)

(2)内装工事費は,工事費指数と店舗面積に比例する
   ・基準内装工事費30万円/坪×工事費指数×店舗面積
   ・工事費指数Gは,料理価格xと坪面積yの関数とする

                       
           

(3)厨房・給水工事費は,工事費指数と厨房面積に比例する
   ・基準厨房・給水工事費60万円/坪×工事費指数×厨房面積

(4)保証金(敷金)は,家賃の20ヶ月分とする。これは契約を解除するときに戻ってくるもの
と考え、保証金以外はすべて家賃に上乗せされるとする。5年間店舗を借りる契約と考え、毎月1/60を家賃に一部として支払わなければならない。

2.4.開業時の必要経営資源と利用資金源

 営業を行うに開始するに当たっては、まず食材などを購入するため営業用の資金が必要である。これは1ヶ月分の現金として支出される費用が相当するものとする。その他、店舗を構えるにあたり、購入した備品を金額評価し、また保証金として預けてある金額もまた経営資源の一部である。

一方、資金源としては自己資金と借金があるが、ここではワークシートにあるような金額の制限と支払わなければならない利息の率を設定する。開業に当たっての必要な総資金量は必要経営資源の全額であるから、これが定まるとどこからどれだけの資金を手当するかという意思決定なされることになる。そして、資金源と利用額、および利率が定まればこの1ヶ月間の支払うべき利息が算定できる。

2.5.現金収支

1ヶ月間の現金収支は1ヶ月間の経営成績と1ヶ月後の経営資源の状態を結びつける役割を果たす。そこで、予想される資金の出入りを見てみよう。もくろみ通りお客さんが来たとすればその分の売上によって現金収入が発生する。一方お客さんに提供する食事のために、食材等、水道光熱、人件費、家賃の支払いを行わなければならない。さらに備品の消耗部分の補充のための購入もある。そして、もしも資金の残高に余裕があれば、なるべく借金を減らすことが利息支払いの負担を軽減することになるので、借金の返済も行われるだろう。

2.6.1ヶ月間の成績および1ヶ月後の保有経営資源と資金源

 売上から費用をひけば1ヶ月間の利益が算定される。この利益は1ヶ月後の保有資源の新たな資金源となると同時に、現金として手元に残る。したがって、1ヶ月後の現金の保有高は売上で回収された食材等や人件費などへの支出額と利益額がベースとなる。もしも借金を返済していれば、その分だけ現金は減った残高となる。

3.課題提出(グループ)

 Excelのたこ焼き屋の例題を載せたワークシートを参考にして、各グループで自分たちの設定に基づくワークシート(収入支出ワークシート、改行時の経営資源、1ヶ月の現金収支、1ヶ月の成績、1ヶ月後の経営資源)を作成し、第1回実験のときと同様に、各班A、Bグループごとに1つのファイルをlabfsrv01の指定フォルダへ提出すること.ファイルネームは「班番号(01から22)‐グループ(AまたはB)」で提出しなさい。なお、実験時間内に終了しなかった時には、翌週月曜日の正午までに同フォルダへ提出すること。

またExcelシートに作成したような経営結果になったことについて、自分たちの事業計画との関係から分析・考察し、グループで1通のレポートを作成しなさい。分量はA4版で1枚(40文字×30行)以内とし、上記Excelシートの提出と同じく、翌週月曜日の正午までにlabfsrv01の指定フォルダへ提出しなさい。

4.宿題(個人)

 実際にラーメン屋などの飲食店へ行き(行けなければこれまでの経験を思い出す)、どうしてその店が繁盛しているのか、あるいは流行っていないのかを分析しなさい。そのため店を観察する視点として、
・店舗の外見(構え)、見栄え、入りやすさ
・店舗の雰囲気、落ち着き、居心地
・店舗の内装と料理の雰囲気のマッチング
・料理時間の待たせ方
・料理の味付け、内容と客層のマッチング
・店舗、トイレや食器などの清潔感、手入れ、センス
・店員の接客態度
・値段と味・雰囲気のマッチング
などがヒントとして挙げられる。

この宿題は個人で作成するものとし、分量はA4版で2枚(40文字×30行)以内とし、期限は11月14日(月)正午までにlabfsrv01の指定フォルダへ提出すること。

以上